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株主総会資料の電子提供制度の創設

今回の会社法改正(2022年施行予定)により、 株主総会資料の電子提供制度が新設されました。 第3款、新法325条の2以下において「電子提供措置」として定められています。

新法325条の2は、定款に定めることにより、 株主総会参考資料等の電子提供措置を採用できることを規定しました。

まず、「電子提供措置」について説明します。 電磁的方法により、株主が情報の提供を受けることができる状態に置く措置のことです。 Webサイトでの掲載などがこれに当たることになります。
「株主総会参考資料等」とは、新法325条の2第1項かっこ書によると、①株主総会参考資料、②議決権行使書面、 ③437条の計算書類および事業報告、④444条6項でいう連結計算書類、を指します。

電子提供制度を採用した場合、新法325条の3により、株主総会の招集にかかる電子提供措置の規律に従う必要があります。

電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、株主総会の招集通知を書面で行う必要がある場合 (会社法299条2項各号)には、①株主総会の日の3週間前、もしくは②株主総会招集通知の書面による通知を発した日、 のいずれか早い日から、株主総会の日後3ヶ月を経過するまでの間、新法325条の3各号に掲げる情報について、 電子提供措置を行わなければならないとしています。

新法325条の3各号に掲げる情報とは、以下の情報をいいます。

① 298条1項各号に掲げる事項(株主総会の日時や場所、株主総会の目的事項等)
②(書面投票ができる場合には、)株主総会参考資料記載事項および議決権行使書面記載事項
③(電子投票制度を採用している場合には、)株主総会参考資料記載事項
④(株主提案があった場合には、)議案の要領
⑤(取締役会設置会社である場合で会社召集の場合には、)計算書類・事業報告記載事項
⑥(会計監査人設置会社である場合で会社招集の場合には、)連結計算書類記載事項
⑦(①から⑥に掲げられている情報を修正した場合には、)その旨および修正前の事項

これらの情報を、定める措置期間にわたって、電子提供措置をとる必要があります。

ここで、電子提供措置をとる会社は、株主総会の招集通知について修正が入ることについて触れておきます。
新法325条の4第1項は、電子提供措置をとる場合には、会社法299条1項の定める招集通知の期限について 公開会社・非公開会社の区分を問わず一律に2週間と定めています。電子提供措置をとる場合には、 株主総会の招集通知の送付期限について修正が入ることに注意が必要です。

次に、電子提供措置制度を採用する会社について、インターネット等へのアクセスが困難な株主の保護も目指し、 「書面交付請求」の制度を認めました(新法325条の5)。

電子提供制度をとる旨の定款の定めがある会社の株主は、会社に対して 新法325条の3第1項各号に掲げる事項(「電子提供措置事項」と名付けられています) を記載した書面の交付を請求することができます(新法325条の5第1項)。
この書面交付請求を受けた会社の取締役は、請求した株主に対して当該株主総会に関する 電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があります(新法325条の5第2項)。 基準日制度を設けている会社の場合、基準日までに書面交付請求をした株主に限り書面交付義務があります(新法325条の5第2項かっこ書)。

なお、新法では、書面交付請求の効力の存続期間について定めがありません。
そこで、新法325条の5第4項は、書面交付請求がなされた日から1年を経過した場合に、新法325条の5第2項による 書面の交付を終了する旨を通知し、およびこれに対して異議がある場合には一定の期間内(「催告期間」)に 異議を述べるべき旨を、催告することができると定めています。
会社の通知した 催告期間(1か月を下回ることはできないとされています)を経過し、かつ、株主から 異議がなかった場合には書面交付請求の効力が失われることになります(新法325条の5第6項)。

仮に、会社が上記通知・催告を行わないような場合には、書面交付請求の効力が存続することになるので、 請求以降の株主総会について電子提供措置事項を記載した書面を交付する必要があることになります。新法325条の5第6項は、 書面交付請求に無制限に応じ続ける会社の負担軽減を図った規定といえます。

最後に、電子提供措置の中断について解説します。
電子提供措置は、会社のwebサイト等が正常に機能していることが前提の制度といえます。 したがって、webサイトが機能していないような場合には電子提供措置をとれない状態が発生することになります。

新法325条の6は、このような電子提供措置が中断した場合について規定しています。「電子提供措置の中断」とは、 株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改 変されたこと、をいいます(新法325条の6柱書かっこ書)。 Webサイトがダウンしたような場合がこれにあたると考えられます。

新法325条の6は、 電子提供措置期間中に電子提供措置の中断がある場合、次の4つのいずれの場合にも該当する際、 電子提供措置の中断が、電子提供措置の効力に影響を及ぼさないとしています。

①電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること(新法325条の6第1号)

②電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の10分の1を超えないこと(同条2号)

③当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の10分の1を超えないこと(同条3号)

④株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について 当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと(同条4号)

株主総会実務への影響

まずは株主総会実務における対応です。今回、株主総会関連の改正点として、電子提供措置制度が創設されました。

電子提供措置は、前述のように株主総会の日の3週間前の日、または招集通知の発送日のいずれかの早い日から提供を行う必要があります(新法325条の3第1項)。 開始時期については、遅くとも上記の期日までに行う必要があると定められているのみで、これより早く提供を行うことについては特に定めがないので、 始期はいくら早めてもいいということになります。
現在の株主総会実務において、株主総会の日3週間前、もしくは招集通知の発送日までに参考資料等が完成していないということは考えにくく、 日程的に今よりタイトになることはあまり想定されていません。

電子提供措置は株主との建設的対話にその趣旨が置かれているところ、かかる趣旨を全うすべく、 株主総会における参考資料等の中身のさらなる充実がより求められることになることが予想されます。
電子化により提供情報の量について制約が弱まることになると考えられ、株主との今まで以上の対話が求められることになります。

ただし、書面交付制度が存在していることから、書面の準備はなお必要になってくるものと思われ、 どの程度の書面交付の準備が必要かは今後の株主総会実務の動向を注視していくことが求められます。

なお、今回の電子提供制度は、上場会社について一律に適用されます。
上場会社は振替株式を利用する必要がありますが、今回振替株式制度利用の要件として、 定款に電子提供措置を定めて電子提供措置を採用している会社の株式であることが必要とされました (会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律9条により社債、株式等の振替に関する法律の一部が改正されます)。

特別決議を得て、定款変更を行う必要はなく、改正会社法の施行に伴い、電子提供措置を採用する旨の定款変更決議がなされたものとみなされることになります。

したがって、上場会社においては電子提供措置をとる必要があります。なお、電子提供措置を採用する旨の定款の変更について、 改正法の施行日から6か月以内にこれを行う必要があります。

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